先日、無印良品のノック式蛍光ペンがいかに素晴らしいか、という記事を書いた。
(参考:「無音」を求めて。通勤電車の読書を変えた、無印良品のノック式マーカー。)
片手で使えて、音も静か。あれは間違いなく名作だ。
しかし、人間というのは恐ろしいほど欲深い生き物だ。
静まり返った純喫茶や、深夜の書斎で本を読んでいると、あの無印良品の「コトッ」という極小のノック音すら、ノイズとして気になりだしてしまったのだ。
「もっと静かに。なんなら『無音』でマーキングしたい」
そんなこじらせたこだわりを爆発させた結果、たどり着いたのがZEBRAの「フィラーレ ディレクション 蛍光」だ。
価格は、通販サイトで約1,800円。
たかが蛍光ペンにこの金額。正気の沙汰ではないかもしれない。だが、「完全な静寂」をお金で買ったと思えば、安いもの……なのかもしれない。
今回は、この高級蛍光ペンを実際に使って感じた「圧倒的な静音性」と、それと引き換えにある「強烈なクセ」についてレビューする。
ノックですらない。「繰り出し式」という無音の作法
最大にして唯一無二のメリット。それは「音がしない」ことだ。これに尽きる。
このペンは、キャップ式でもノック式でもなく、高級ボールペンのような「繰り出し式(ツイスト式)」を採用している。
リップスティックのように本体を回すと、ヌルッとペン先が現れる仕様だ。
この動作音が、本当に無音なのだ。
「カチッ」も「コトッ」もない。ただ、ヌルリとペン先が出るだけ。
シーンとした喫茶店で、集中して本を読みながら、気になった行にスッと線を引く。
そこには一切の打撃音が存在しない。このスマートさは、一度味わうと戻れなくなる。
「周囲に音で迷惑をかけていないか」という自意識から解放されるのは、精神衛生上すこぶる良い。
1,800円でも手放しでは褒めない。4つの「クセ」
静音性は完璧だ。だが、正直に言おう。
このペン、人を選ぶ「クセ」は強めだ。
1. トルクが重すぎる(握力検査か?)

個体差かもしれないが、回転動作(トルク)がかなり重い。
僕は手が大きく、握力も人並み以上にあるので片手で「ぐっ!」と回せるが、指の力が弱い人だと、片手での操作は厳しいかもしれない。
「高級感のある重めの操作感」と言えば聞こえはいいが、現状、マーキングのたびに気合を入れて回している。
使っているうちに馴染んで軽くなることを祈るばかりだ。
2. ペン先が細い=「ディレクション」の意味
一般的な蛍光ペンに比べると、引ける線がかなり細い。文字全体を覆うには幅が足りない。
ただこれは、商品名にある「ディレクション(指示)」という言葉から察するに、仕様通りなのだろう。

おそらく想定ターゲットは、マネージャー職だ。
部下から上がってきたA4資料に目を通し、「ここ修正」とチェックを入れる。そんなシーンなら、この細さはむしろ武器になる。
読書に使えないほどではないが、「塗りつぶす」感覚で使うと違和感があるかもしれない。
ちなみに、ペン先はおそらく同社の「クリッカート」と同じだと思われる。
クリッカートもノック式だが、あれはノック音が盛大に鳴る。
つまりこいつは、「クリッカートに、静音と高級感という重装甲をまとわせた姿」なのだ。
3. 重い。そして高い
手に取るとズッシリくる。おそらく真鍮製だろう。
この重みは所有欲を満たしてくれるが、長時間線を引いているとシンプルに疲れる。
そして1,800円。
リフィルを変えれば長く使えるので、長期的なROI(投資対効果)で見れば悪くないが、初期投資としては勇気がいる金額だ。
4. 見た目が少し「かわいい」

デザインが全体的に柔らかく、少しフェミニンな印象を受ける。ボディも少しラメが入ったような塗装だ。
できればマットブラックやネイビーなど、もっと無骨なカラー展開が欲しかったのが本音だ。
40歳を過ぎたオジサンが、カフェでこの丸みを帯びたペンを使っている図。
客観的に見ると「かわいすぎるか?」と一瞬よぎるが、まあ、誰も他人の手元など見ていない。そう自分に言い聞かせている。
蛍光ペンだぜ、というささやかな主張

ちなみに、このフィラーレにはボールペン版とサインペン版も存在するのだが、蛍光ペン版には軸に小さな「ピンクのマーク」が入っている。
ペン立てに入れた時、パッと見分けがつく仕様だ。
「俺はボールペンじゃない、マーカーだ」という地味な自己主張。こういう細かいUI設計は嫌いじゃない。
結論:クセはあるが、静寂は手に入る

- 繰り出しが異常に重い
- 本体も重い
- 線が細い
- オジサンには少しかわいい
いろいろ文句を垂れたが、「完全に無音でペン先が出せる」という一点において、僕は当面このペンを使い続けるつもりだ。あわよくば、使い続けることで繰り出しトルクがもう少し軽くなってほしい。
音に敏感な人、あるいは握力に自信がある人。
そして何より、「文房具に2000円近く払ってでも静寂を手に入れたい」という酔狂なこだわりを持つ同志には、ぜひ一度試してみてほしい。

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